寒地土木研究所は現場密着型の技術開発、技術普及および地域における技術の向上等のため、道央、道南、道北、道東に支所を設置しています。各支所では研究開発の現地調査・試験の拡充と ともに、地域におけるニーズの把握や研究成果の普及、技術指導を実施しています。
「技術者交流フォーラム」はこれらの活動の一環として、地域において求められる技術開発に関する情報交換、産学官の技術者交流および連携等を図る目的で、開催しています。
今回は「十勝における地域資源活用の現状と展望」をテーマに、平成22年1月26日(火)ホテル日航ノースランド帯広で開催し、産学官から約200名の参加を得ました。
帯広畜産大学地域環境学研究部門長 土谷富士夫教授は、基調講演で「寒冷地の冬の寒さは降雪や凍結を引き起こし、除雪や融雪、道路の凍上害など人々の社会活動に影響を与えてきた。しかし、近年のエネルギー問題・環境問題を背景に雪氷が見直され、地域密着型のエネルギーとして注目を浴びている」とし、ヒートパイプと呼ばれる伝熱素子と冬期の寒気を利用して貯蔵庫周囲に人工的に凍土をつくり、庫内を低温に維持する「ヒートパイプ型凍土低温貯蔵庫」を紹介しました。「自然エネルギーを利用した新しい貯蔵システムである『ヒートパイプ型凍土低温貯蔵庫』は農産物の貯蔵に適した低温と高湿の環境を実現し、環境性、経済性、安全性に優れ、地域ブランドの創出にも繋がる」とし寒さ利用の展望を示しました。
帯広開発建設部 柴田哲史次長は、インフラ整備の工事段階での先進的・実験的な環境対策を推進する取り組みとして「エコ・コンストラクション・イニシアティブ」について説明し、具体的な取り組みとして河川で発生する流木を利用した木質バイオマスの活用検討や河川堤防の採草の活用などについて説明しました。
(株)土谷特殊農機具製作所 土谷紀明代表取締役は「冬の寒さは無限の資源」とし、水の潜熱を使用したアイスシェルターを紹介しまし、また、北海道で大量に発生する家畜排泄物をエネルギーとして利用するためのバイオガスプラントの取り組みを説明しました。
(株)ズコーシャ総合科学研究所 保井聖一農業科学科長は、北海道におけるバイオガスプラントの現状を説明し、「バイオガスプラント建設初期に見られたふん尿の凍結や原料搬送経路の配管やポンプの閉塞といったトラブルはほぼ解消した」ことを明らかにし、消化液の肥料効果の解明やバイオガスプラントを基本とした社会システムの構築が今後の課題との見解を示しました。
(独)土木研究所寒地土木研究所 横濱充宏上席研究員は、これまでの別海バイオガスプラントでの実験結果を紹介し、北海道での普及の課題としてプラントの経済的自立をあげ、バイオガスプラントが普及している欧州では売電料金が日本より5倍近く高いことなどを紹介しました。また、消化液の施用が化学肥料の散布に比べ、農地の自力増進や牧草の収穫量向上に大きく貢献することも説明しました。
その後、行われたパネルディスカッションでは、会場からの質問を交え、各講演者が活発に議論を交わし、最後にコーディネーターである土谷教授が「水が蒸発するエネルギーを利用することで産業革命が起きました。水が氷になるときのエネルギーも利用できることを若い世代に教えていきましょう」とまとめ、フォーラムを終了しました。
寒地土木研究所各支所では今後とも、各地域における産学官交流の場として技術者交流フォーラムを行っていく予定です。
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土谷冨士夫教授による基調講演 パネルディスカッションの様子
(寒地土木研究所 道東支所)