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イベント情報

 
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      第27回 技術者交流フォーラム in 函館
       「北海道新幹線を活かした道南の地域づくり」を開催しました


 技術者交流フォーラムは、寒地土木研究所が地域において求められる技術開発に関する情報交換、産学官の技術者交流及び連携等を図る目的で平成20年度から北海道各地で開催し、今回で27回目を迎えます。

 今回の技術者交流フォーラムでは、「北海道新幹線を活かした道南の地域づくり~地域での取り組みと今後の可能性~」をテーマに社会資本整備と地域の新たな取り組みになどについて語り合うもので、平成28年9月27日(火)、フォーポイントバイシェラトン函館において開催しました。地元企業、官公庁等から130名の参加がありました。

 講演に先立ち、主催者を代表して、寒地土木研究所長 鎌田照章から開会の挨拶と研究所の紹介がありました。

 基調講演として、室蘭工業大学大学院工学研究科准教授の有村幹治氏から、「北海道新幹線と道南の地域づくり」と題してお話をいただきました。まず現状の認識として超高齢化社会が到来している日本は人口減の局面を迎えることが確実であり、特に生産年齢人口の減少が課題となっていること。この中で社会を保っていくためには広域の社会ネットワークを構築することが重要であり、他のコミュニティー同士を繋げ交流人口を増加させる仕掛けになる人たちや組織がこれからは大切で、異なる価値観とのアクセスと整備がまちづくりで重要だと説き、北海道新幹線が札幌へ開通するまで残り14年しかなく、エリアマネジメントのプランニングが急務だと指摘し、道南地域について、「強み」「弱み」「機会」「脅威」の4方面から分析(SWOT分析)していただきました。 観光客の属性分析として、道内客が大多数なのが実態ですが、消費額では道外・海外客で4割に達していること。個人旅行客が増加し、旅行の形態が多様化していること。道南の冬季は観光客が減少する傾向があるが、新幹線開通に伴い変化する可能性を指摘しました。また、RESAS(地域経済分析システム)とNITAS(国土交通省総合交通分析システム)を紹介し、旅行者の滞留、移動時間、潜在需要を把握できるとのことでした。 航空機ではなく新幹線で移動するかについては「4時間の壁」が取りざたされているが、関東圏から新函館北斗駅へのアクセスは増加しており、魅力があれば観光の需要は期待できるとし、札幌延伸後も函館をハブ地点として活用する考えからもあるのではないかと述べられました。 新幹線が札幌まで開通するまでに道南地域が集客力と収益力を高めるための魅力づくりが欠かせませんが、今後、並行在来線をいかに有効活用するか、また自然災害の増加に伴う復旧費用の増加が、並行在来線の今後の方向性に影響を与える点が、道南が直面している「脅威」の一つであると指摘しました。 道南の「強み」として、食や文化等、豊かな観光資源を活用した地域の企画力は評価できるとし、さらに観光客に滞在したいと思わせる居場所「サードプレイス」の創出や、駅の待ち時間を活用した地域紹介、東北と相互連携し広域エリアの魅力をアピールすることも提言されました。 デストネーション・マネジメント・オーガナイゼイション(DMO)という、地域・観光資源のマーケティングとプロモーションを担い、観光集客をはじめ、資源管理やサービスの品質管理、観光戦略の立案や事業計画のマネジメント機能を有する自律的に組織運営される組織、十勝の具体例を紹介いただきました。 反面、「弱み」として二次交通の不足を指摘しました。マーケティングの一環としての情報発信事例として、「ずーしーほっきー」のようなインパクトのあるキャラの持つ大きな拡散力・媒介力の利用、また情報収集として、地元が気づいていない魅力を把握できる海外で独自作成されたガイドブックの活用や、道南地域を対象としたツイッターのつぶやき分析を提案されました。 最後に、道南を巡る外部環境と自身の抱える内部環境について、孫子の「敵を知り己を知れば百戦危うからず」を引用し、難しいながらも日々の活動の継続で人口減の中でも集合知を発揮し、道南地域が躍進していくことに期待をよせられました。

写真1・2
写真:フォーラムの様子 写真:基調講演の様子
フォーラムの様子
基調講演を行う有村准教授

 講演では、NPO法人スプリングボードユニティ21理事長の折谷久美子氏から「地域の個性を活かしたおもてなし」と題して、NPOがこれまで行ってきた、誰でも参加できる内容で地域に役立てる取り組みを紹介いただきました。函館港まつりの「いか踊り」への参加から始めた活動は、多数の入賞を得られましたが、その実施は寄付に依存しており、活動の転換期を迎えました。法人格を取得して資金を蓄え、前向きに活動しようと平成15年に花による観光客へのおもてなしとして、花懇談をはじめ、函館への道路の玄関口である函館新道の沿道を彩る花壇の植栽などに、他団体や地元の子供たちと取り組み、13年目を迎えた今年は道路功労者として表彰されました。また客船が立ち寄る函館港では、観光客をいか踊りといかめしで歓迎し、道南のシーニックバイウェイ活動「シーニック de ナイト」では、冬の道路沿線などを手づくりワックスキャンドルで灯す活動に参加、北海道新幹線開業時には、駅で夜に訪れた観光客を出迎えて、大変喜ばれました。これらは多数の機関や皆様のご協力をいただき、高橋北海道知事にも激励をいただきました。お金がなくても、多くの仲間がいれば知恵と創意工夫で行動する。地域が仲良く連携して取り組むことで、今後の可能性が広がるとのお話をいただきました。

 次に、道南いさりび鉄道株式会社代表取締役社長の小上一郎氏から「地域と共に未来へ伸びる道南いさりび鉄道」と題し、いさりび鉄道の沿革と現状についてご紹介いただきました。平成26年に第三セクターとして設立され、翌年に公募で選ばれた現社名に改称して札幌から函館に本社を移転、地元の生活輸送の確保という役割のもと今年3月26日に開業しました。新幹線効果もあり乗客数は増加傾向ですが、満員になっても赤字という実情や、軌道や車両の維持管理を全て行わなくてはならない点がバス事業と異なり、公的補助制度もないのが難点だとし、相変わらず厳しいながらも努力を続けて安全で安定した鉄道運営が可能な体制を目指していくとともに、地域のために残した鉄道の使命として、通勤通学のみならず地域に根ざした地域運営、および沿線地域の観光交流の促進も担っていきたいと述べられました。

写真3・4
写真:折谷氏 写真:小上氏
折谷氏の講演
小上氏の講演

 最後に、寒地土木研究所地域景観ユニット総括主任研究員の松田泰明から、「地域の魅力に影響する公共空間の課題と今後に向けて」と題し、講演を行いました。2050年に向けて北海道が目指す姿として、国や北海道では世界水準と国際競争力をキーワードとした観光地づくりの目標が示されていること、そのためには観光先進国と比較して見劣りする、日本の公共空間を魅力あるものとすることが重要であるとし、その効果を調査データで示しました。また、滞在型観光地の評価に影響する6つの共通パターンを見いだし、その適合度が高いほど街の雰囲気の評価も高かったこと、一方、北海道の温泉地ではこのパターンの適合度と街の雰囲気の評価が低くいことを報告しました。さらに北海道のインフラ整備が地域の魅力の低下を引き起こしている具体例を紹介しつつ、インフラの景観デザインによる国の振興を国策としている北欧などの事例を参考に、魅力的な公共空間の整備は観光のためだけではなく、住民や地域を幸せにする効果があると述べ、北海道は世界レベルの観光資源を多く有し、これらを生かしたインフラ整備とそれを効果的に進めるための研究が必要だとの提言がありました。

写真5
写真:松田総括主任研究員
講演を行う松田総括主任研究員

 最後に、共催者を代表して菊池一雄函館開発建設部長から閉会の挨拶として、講師の方に対する感謝と講評、参加者に対するお礼を述べられました。

 今回の内容について参加者へアンケートを実施した結果からは、「大変参考になった」「大変有意義であった」などのご意見を多数いただきました。寒地土木研究所では、今後も研究成果の普及や技術指導等を通じた地域貢献を念頭に皆様と積極的に情報交換や連携等を行い、幅広い関係者との交流ができるようなフォーラムを開催していきたいと考えております。

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