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イベント情報

 
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    第30回 技術者交流フォーラム in 帯広
    豪雨・洪水災害に対する社会資本の防災を考えるフォーラム~平成28年8月十勝地域の豪雨を踏まえて~を開催しました

 技術者交流フォーラム事業は、地域において求められる技術開発や北海道総合開発計画の推進に資する技術開発等に関する情報交換、産学官の技術者交流及び連携等を図ることを目的とし、平成20年度から北海道各地で開催し、今回が30回目となります。
 昨年、帯広市で開催予定であった技術者交流フォーラムは、直前に豪雨による大規模災害が発生し、関係者の多くがその復旧対応に当たられることに鑑み、開催を中止しました。今回はその豪雨・洪水災害の状況を踏まえて、これまでに整備された社会資本の防災対策や将来に向けた防災対策のあり方などをテーマとし、平成29年10月17日(火)、帯広市内のとかち館にて、帯広開発建設部との共同で開催し、当日は189名の参加者がありました。
 講演に先立ち、寒地土木研究所長の鎌田照章より開会の挨拶と研究所の紹介が行われ、フォーラムが始まりました。

 基調講演では、帯広畜産大学環境農学研究部門の辻修教授より、「平成28年8月豪雨による農業用排水路の被害状況と今後の対策」と題して、寒地土木研究所との共同により現地調査を行った清水町のホネオップ川と農業用排水路を事例に河畔林の役割と重要性が紹介されました。初めに、昨年の台風10号は日高山脈の地形がもたらした特異な豪雨特性があり、近年の気象変化から、これからは防災から減災へ向けて対策をとるべきと意見されました。排水路の設計では、河川流出のメカニズムを図解で説明しながら、今後は降雨だけではなく土質や浸透係数なども加味した河川流出量の計算、土壌雨量係数は地域特性を考慮した算出が必要であると述べられました。また、洪水後の流木被害が発生するたび河畔林が悪者にされるが、今回調査した河川や排水路では、堤内側の河畔林が河岸洗掘を抑え農地が守られていたことが確認できたことから、河川沿いに堤内減災河畔林として整備すれば自然に優しい減災ができること、また、全路線に設置することが理想であるが、少なくとも橋梁上下流に整備すれば洗掘による橋梁損壊の抑止につながり減災効果が期待できると述べられました。

写真1・2
写真:フォーラムの様子 写真:基調講演の様子
フォーラムの様子
基調講演を行う辻教授

  帯広開発建設部の井田泰蔵次長の講演では、「帯広開発建設部管内の土木関係施設の防災対策」と題して、昨年の台風で被災した十勝川水系の河川や国道の状況が説明されました。豪雨により多くの気象観測所で降雨量が極値を更新し、河川の水位観測地点では計画高水位を上回る既往最大水位を記録したところもあったこと、また、札内川、音更川で決壊した堤防の復旧工事の概要や災害時のホットライン、リエゾンの派遣、治水事業の効果のほか、北海道緊急治水対策プロジェクトのハード・ソフト対策の概要についても説明されました。昭和56年の石狩川大洪水以降、河川では様々な治水整備を進めてきたが今回の出水はその規模を上回ったため、今後、必要に応じて河川整備計画の見直しをしていく必要があることや日勝峠や狩勝峠、国道38号の被災状況と復旧工事の説明のほか、ICT(情報通信技術)の活用により被災箇所の迅速な状況把握と危険作業の回避の事例が紹介されました。
 日本技術士会北海道本部道東技術士委員会の紅葉克也代表の講演では、「豪雨災害後の河川一次調査と復旧に向けた課題」と題して、昨年の災害発生後に防災エキスパートとして河川の被害状況を調査した際の考察や課題が紹介されました。洪水時の流況や水中の土砂の挙動、河岸浸食の発生時期などを考察しながら出水直後の札内川の映像をもとに出水前後の河道変化を比較し、河岸防護の方策を提案されました。また、堤防保護対策の効果、戸蔦別川合流部の堤防決壊、左岸霞堤の流出、音更川右岸の護岸流出について説明され、防災エキスパートの視点から今後の堤防強化の必要性、はん濫想定区域における堤防裏面の強化や樋門の規模、川の流れを制御する河道断面についての課題が提起されました。
  防災地質チームの倉橋稔幸上席研究員からは、「地形地質からみた日高山脈北部の斜面災害」と題して、日勝峠、狩勝峠の斜面災害について地形・地質の特徴を交えながら災害状況が説明されました。日高山脈北部の地形・地質は、氷河期の寒冷な気候下で形成された緩やかな地形と火山灰が堆積した未固結、軟弱な地層(周氷河斜面)に覆われており、斜面災害はこの地形・地質によるものと判断されたことや侵食谷の崩壊による土砂流出が多く見られたことなど、斜面崩壊の形態とメカニズムを説明されました。狩勝峠では1962年にも類似した斜面災害が発生しており、周氷河斜面では表面水や浸透水の処理対策が重要であることが述べられました。

写真3・4・5
写真:井田次長 写真:紅葉代表 写真:倉橋上席
井田次長の講演
紅葉代表の講演
倉橋上席研究員の講演

 参加者アンケートでは、「現場でしか分かり得ない写真等、現場の状況を説明してもらい理解できた」、「行政、コンサルタント、研究者それぞれの視点から災害を見た貴重な話を聞けたので参考になった」などの感想を頂き、「大変有意義であった」、「有意義であった」と回答した方が90%を占めました。また、今後希望するテーマとして、「ICT技術について」、「釧路湿原の治水効果について」、「低炭素社会の形成について」などの意見をいただきました。多数のご参加及びアンケートのご協力ありがとうございました。

 今回の内容に関し、参加者へのアンケート調査を実施した結果からは、「大変参考になった」、「有意義であった」等のご意見を多数いただきました。  講演者並びに本フォーラムの開催にあたり、ご協力いただきました関係各位に御礼申し上げます。

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