寒地土木研究所

  • 文字サイズ:
  • 文字サイズ「最大」
  • 文字サイズ「大」
  • 文字サイズ「標準」

イベント情報

 
寒地土木研究所ページトップ

寒地土木研究所イベント一覧

    第35回 技術者交流フォーラム in 岩見沢
    フォーラム:地域(そらち)における、ICTの普及と可能性
    ~「ICT活用工事現場の現場見学と技術講演会」~を開催しました

 1.はじめに
 技術者交流フォーラム事業は、地域において求められる技術開発や北海道総合開発計画の推進に資する技術開発などに関する情報交換、産学官の技術者交流及び連携を目的とし、平成20年度から北海道各地で開催し、今回が35回目となります。
 今回は、岩見沢市において「地域における、ICTの普及と可能性」と題し、ICTを活用した地方創生や生産性向上の取り組みについて、現場見学会及び講演会にて、令和元年9月27日に国土交通省北海道開発局札幌開発建設部及び公益社団法人日本技術士会北海道本部と共同で開催し、延べ149名の参加者がありました。本催しは札幌開発建設部さっけんセミナーと合同の催しとして開催しました。
 

 2.見学会概要
 ICT活用工事現場の見学会は、実際に現場におけるICT技術を活用し施工している石狩川右岸の上新篠津工区河道掘削現場の協力を得て、 株式会社田端本堂カンパニーの平松敦史監理技術者より最新の3Dレザースキャナを用いた3次元起工測量、並びに3次元設計データを活用した 土工、3次出来形管理などの施工管理について、実際の3次元設計データ、ICT油圧ショベル専用機器による施工方法、機能を機器のモニタを 用いて説明、現場作業の効率化・安全性の向上についてお話しいただきました(写真-1、2)。また、3次元設計を担当した若手技術者より貴重な経験をお話しいただきました。
 見学者からはICT建設機械の施工精度、土質条件、勾配などの様々な現場条件への適応性、施工時の留意点などについて質問がありICT活用工事に対する関心の高さをうかがえました。

写真-1
写真-1:見学会
写真-1 見学会

写真-2
写真-2:モニタでの説明
写真-2 モニタでの説明


続いてコマツIoTセンタ北海道において「ICT建設機械の解説」と「日本の建設現場を劇的に変えるスマートコンストラクション」と題した建設生産性向上の取り組み及び土木工事の未来について 説明をいただきました(写真-3)。工事の最初から検査納品までの全工程をいままでの2Dから3Dデジタルで有機的に「つなげる」ことで生産性を大幅に向上し、安全性の高いスマートな「未来の現場」を創造いていくソリューションについての紹介とサポートセンタの役割について動画を使いわかりやすく解説いただきました。
写真-3
写真-3:コマツIoTセンタ北海道
写真-3 コマツIoTセンタ北海道 


 3.講演会概要
 最初に、岩見沢市の松野哲市長から、「ICT活用による地方創生~農・食・健康をICTでつなぐまちづくり」と題してご講演いただきました(写真-4、5)。
 はじめに岩見沢市の地域特性とも言えるICT環境を活用した施策取り組みについての紹介、次に少子高齢化、人口減少、担い手不足、生産性向上などの社会課題への対応として先駆的に展開してきたロボット技術をはじめとしたスマート農業の社会実装、Society5.0を見据えた様々な取り組みについて説明いただき、 ICT環境など地域特性を活かす地方創生には産学官協働体制が不可欠でスマート農業の社会実装のもと「農・食・健康」が連動する施策を網羅的に展開していきたいと述べられました。

写真-4
写真-4:講演会場の様子
写真-4 講演会場の様子

写真-5
写真-5:岩見沢市 松野哲市長
写真-5 岩見沢市 松野 哲市長


 続いて、国立大学法人北海道大学大学院農学研究院の野口伸副院長の講演では、「Society5.0を具現化するスマート農業技術の紹介」と題して、 現在の日本農業の問題を解決すべく政府が実現を目指す「Society5.0」がスマート農業でどこまで進んでいるかとして、世界最先端のスマート農業地域 である岩見沢市での取り組みについて詳しく紹介をいただきました(写真-6)。また、就業者人口減少と高齢化が進む日本農業においてはスマート農業 技術の導入は不可欠であり、内閣府SIP「次世代農林水産業創造技術」では「水田農業」のスマート農業技術の開発を行い、農業版Society5.0を目指し、 その核になる農業連携基盤(WAGRI)を構築したことを述べられました。世界が注目している地域である岩見沢市では内閣府「近未来技術等社会実装事業」 に取り組むとともに北海道大学・NTTグループと産官学連携協定を結び世界トップレベルのスマート農業モデルの構築を進めるとともに、2020年までに遠隔 監視の無人作業システムの実現には地域を持続的に発展させるために生産のスマート化から流通・消費のスマート化(スマートフードチェーン)へと拡充し、スマートアグリシティへと発展させることが必要と述べられました。
 また、10月からは5Gを使った完全遠隔監視システムを北海道開発局の協力を得て岩見沢市とNTTで実証実験を進める予定と説明されました。
写真-6
写真-6:北海道大学農業研究院 野口副院長
写真-6 北海道大学農業研究院 野口副院長


 次に、寒地機械技術チームの片野上席研究員の講演では、「ICT活用による視程障害時の除雪車運行支援技術」と題して、除雪車を用いた自車位置推定技術及び周囲探知技術について研究成果を報告しました(写真-7)。近年、北海道では 暴風雪などの異常気象に伴う冬型災害が頻発していることから、視程障害時に安全に道路を早期解放する除雪技術の開発が必要であり、最も重要である自車位置を正確に把握する測位技術の開発経過と「磁気マーカシステム」「ガイダンスシステム」について説明がありました。
 最後に北海道開発局などが中心となり、積雪寒冷地特有の課題解決や除雪現場の省力化による生産性・安全性の向上に向け、産学官民が連携する取り組み「通称:i-Snow」について紹介いたしました。

写真-7
写真-7:寒地機械技術チーム 片野上席研究員
写真-7 寒地機械技術チーム 片野上席研究員

 

 空知建設業協会、株式会社砂子組の近藤里史常務取締役の講演では「建設現場における、ICTの普及と可能性~ICT活用工事の現状と課題」と題し、空知地域で施工適期の短さからくる問題点を解決すべく9年前から様々なICTを試行錯誤し導入した貴重な経緯について施工事例を基に説明いただきました(写真-8)。
 ICTバックホウ導入による効率化、冬期施工にはICTの活用は非常に機械コストが高いため、メリットを出すには、社内サポートの充実、使い方の工夫が必要であり、現場のニーズにどう応えられるかが重要であることを述べられました。
 また、スマート農業の発展には施工において得られた電子データを営農データと共有することが不可欠であることなどを述べられました。最後に働き方改革、i- Constructionという大きな流れの中で使い方に関して各社で独自性を持って研鑽を繰り返しながら動き続けること、前向きなスタンスを持ちながら人を育てて農業生産に役立つ良い成果を提供し続けて行きたいと述べられました。

写真-8
写真-8:(株)砂子組 近藤常務
写真-8 (株)砂子組 近藤常務

 

 最後の講演はコマツカスタマーサポート株式会社スマートコンストラクション推進部工藤正裕GMより、「新技術のご紹介・建設のデジタルトランスインフォメーション」と題して、工事現場の生産性向上に寄与させるべく開発した未来に掲げる技術についてご紹介いただきました(写真-9)。
 工事の全工程を3次元でつなげ、工事着手前の地形から完成地形までを最短で最小の人数で安全に正確に変化させることがスマートコンストラクションのコンセプトであり、「人・ハード・ソフト」の3要素が上手く重なりあって現場で進化していくことが重要であることを述べられ、「トラッキングマネジメントシステム」「日々変化する現場が見える!Everyday Drone」などの技術を紹介いただきました。 また、次のステージとして、生産性の高い未来の現場を実現するため、建設現場に携わるすべての人・モノ(土・機械・材料など)の情報をICTでつなぐことで見える化する「IoTプラットホーム」「ダンプの運行管理アプリ」顧客の購入プロセスを見える化する「カスタマージャーニー」などを紹介いただき、現在、レベル2 に位置するICT建設機械が人工知能(AI)を搭載したレベル5の実用化に向け実証を進めていることを述べられました。

写真-9
写真-9:コマツカスタマーサポート(株)工藤GM
写真-9 コマツカスタマーサポート(株)工藤GM

 

 4.おわりに
  今回の内容について参加者へアンケートを実施した結果、「大変有意義であった」、「有意義であった」と回答した方が多数を占め、「現時点の課題と 取り組みの現状や成果が良く分かった」「岩見沢における最先端の技術について、具体的に学ぶことができた」などのご意見をいただきました。寒地土木研究所では、 技術者交流フォーラム事業をはじめ今後も研究成果の普及や技術指導などを通じた地域貢献をしていきたいと考えています。


このページのトップへ